米田淳一「プリンセス・プラスティック」

プリンセス・プラスティック―母なる無へ (講談社ノベルス)

プリンセス・プラスティック―母なる無へ (講談社ノベルス)

大森望がある意味で絶賛していた(狂乱西葛西日記の1997年12月16日参照)のを見て以来、何時か読まねばと思っていた本をようやく読んだ。(…って、もう8年前かよ! 歳を取ると月日が早く流れるなぁ…)
躊躇いながらも薦めていた大森望の気持が良く分かった。本質的にとてもいい本なのだ。でもその良さ自体が「普通の人」に理解してもらうのは難しいかもしれないと思わざるをえない。その上いわゆる「小説」としてはあらが目立つし、イラストだってこれじゃあんまりだよな。ああ、いったいどうしたら、この良さが分かってもらえるんだ…
米田淳一は「愛」の作家だと断言しておこう。作者個人の生い立ちの詮索など余計なお世話だとは分かっているが、それでも敢えて言えば、この人は肉親に激しく愛されて育った人なのではあるまいかと思わせるようなところが、作品の所々にある。そのようにして無制限に育まれた「自己愛」がやがては「普遍的で宇宙的(!)な愛」へ飛躍してゆく可能性にかけてみたいような気がするんだけど…
このデビュー作から既に8年。「プリンセス・プラスティック」の系列作品もこの間に6冊ぐらい出ているらしいので、追いかけてみるつもり。