『ヨーロッパ戦後史』

ヨーロッパ戦後史(上)1945-1971

ヨーロッパ戦後史(上)1945-1971

ヨーロッパ戦後史(下)1971-2005

ヨーロッパ戦後史(下)1971-2005

それなりに面白いし、読んでいて得るものもあるのだが、ここで描かれる「歴史」というものが自分の基準からするとあまりにも抽象度が高すぎるように思えてしまった。
個人というものが存在しない。歴史とは何か抽象的な観念のようなものの運動であり、それが人間を通じて具現化され進化してゆく。人間個人はその道具にすぎない。そんな前提のもとで語られる歴史のように思える。
だから個人に対する興味が全く語られないのだ。スターリンが出てきても彼がグルジア人であることには全く触れられない。ヒットラーの心をむしばむ病理のことも全く語られない。歴史の本質と全くかかわり合いのないことだからだろうか? 本質とか流れを仮定すること自体が歴史に対する誤ったアプローチであるような気がしてならないのだけれど。
自分にとって歴史とは山のように積み重ねられた膨大な数の死体の一つ一つの来歴に他ならない。歴史とは第一義的に一人一人の人間が生きた人生の集積に他ならないのだ。


…というようなことを感じてしまう自分は「歴史書」なんか読まずに「伝記」か「小説」を読んでいればいいのかも。
という訳でJ・G・バラードの自伝を読み始める。

Miracles of Life

Miracles of Life

まだ冒頭をちょっと読んだだけだが、1930年代の上海では朝になると収集車がやってきて路上に転がった貧乏人の死体(←餓死した)を片付けるところから一日が始まるのだ。日本も、朝になると路上に餓死したニート派遣労働者の死体がゴロゴロ転がっているようにならない限りは、まだまだのような気がしてくる。戦前の中国にすら負けてるし…(負けてて良かったとも言えるが…)
さっさと読まねば。でないと、また、翻訳が出てしまう。