遊覧船に乗る

娘と一緒に港まで夜の散歩に出かけたら、桟橋から港内一周の遊覧船が出航するところだった。娘が乗ってみたいと騒ぎ始める。春休みも今日で終わり、明日からは学校だ。この休みは塾の春期講習などに通わせてしまったので思いっきり遊ばせることも出来なかったなぁ、かわいそうだなぁっと、ついついその気になってしまう。
横浜港近辺を二時間もかけてゆっくり回る遊覧船(マリーンルージュ)の最終便である。それも月曜日の夜。当然ながら広い船内は人影もまばらでがらんとしている。(娘を展望室に残して)一人で吹きさらしの甲板に登ってみたら、人影がまばらどころか、人っ子一人いない。まるで無人の船にたった一人で乗っているようだ。見渡せば港にも人影がない。妙な気分だった。そのうち船は横浜ベイブリッジをくぐり抜け外洋(といっても東京湾の中なのだけど)に乗り出してゆく。陸地が遠ざかると辺りは暗くなり、星が見え始める。房総半島の方から冷たい疾風が吹き始め、海は大きくうねり始める。何だか怖くなってきた。この世から人間がすべて消え失せてしまい、自分だけがたった一人取り残されてしまったのではあるまいかという不安感が頭をもたげてくる。もちろんそんな馬鹿げたことがあるはずがないことは十分承知しているのだけれど、それでも何だかそんな気がしてくる… たかが横浜港内を巡る遊覧船でこんな凄い体験ができるとは思わなかった。やはり横浜港の遊覧船は、月曜日の最終便、それも誰もいない甲板に限る。

http://www.yokohama-cruising.jp/kouro.html