小川洋子「博士の愛した数式」

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

「数学」の部分がインチキだったら興醒めだしイヤになってしまうだろうなと危惧して長いこと避けていたのだが、読んでみたら、わりとまともに「数学」だった。
「数学」という「永遠」で「超越的」なものへの憧憬を核に組み上げられた残酷なおとぎ話。
世間ではピュアでヒューマンな心暖まる話ということになっているらしいが、そうした要素と「永遠」なるものとを対比的に配置してみせるその手つきにむしろ作者のとてつもない「残酷さ」を感じる。