J・G・バラードの秘密
三日前にアマゾンに注文した洋書がもう届いてしまった。日本国内で在庫していたらしい。
The Complete Stories of J. G. Ballard
- 作者: J. G. Ballard,Martin Amis
- 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
- 発売日: 2009/09/21
- メディア: ハードカバー
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J・G・バラードの全短編集。
実は同じものをペーパーバックで持っている。
- 作者: J. G. Ballard
- 出版社/メーカー: Flamingo
- 発売日: 2002/11/04
- メディア: ペーパーバック
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買ったのは七年ほど前。ハードカバー版もあったのだが当時で5000円近くした。ケチって3400円ちょっとのペーパーバックにしたのだが、何しろ1000ページを超える大物。造本に無理があるらしく、読んでいるうちに分解してくる。ああ、どうせ買うならハードカバーにしておけば良かったと後悔したが後の祭り。
今回はそのハードカバーの再出版を2900円ちょっとで入手。最初に手に入れたペーパーバックよりも安い。
喜んだのもつかの間、考えてみれば、この再出版は多分バラードが死んだからなので、その意味ではちっとも嬉しくない...
で、本題はここからなのだけど、この再出版には新たな短編三編とマーティン・エイミスによる新しい序文が付け加えられていた。
マーティン・エイミスってどこのどいつなんだよと思ったら、何でも、「地獄の新地図」というSF評論集で大昔に有名だったキングズリー・エイミスの息子だったそうで、十代の時からバラードと面識があったとか。
この人に言わせると「太陽の帝国」asin:4336024421はバラード崇拝者たちにとって魔術師が自分の魔術の種明かしをしてみせたような作品だという。つまりバラード独特な異様でどう見ても「超現実的」であるとしか思えないビジョンが単なる想像力の産物ではなく「実体験」に裏付けられたものであることを、言うならば「(文学上の)自然主義」的手法に則って、説明してくれたというのだ。
この一節には苦笑いせざるを得なかった。
バラード崇拝者の一人である自分もまさしくそのように感じていたからだ。
本当に凄いとは思っているのだが、凄すぎてどこか自分の理解を超えたところがある。それ故にますます惹きつけられてゆく神秘的な存在。それが「太陽の帝国」以前における自分にとってのバラードだ。
ところが「太陽の帝国」を読むとその「神秘」のベールが次々と剥がされてゆく。まさに魔術の種明かしのようなものだった。
だからといってバラード熱が冷めたわけではない。むしろそうした体験を通してようやくのことでバラードに対する「理解」に確かな手応えを感じるようになれたのだ。
以来、自分ほどバラードを理解している人間はいない、という自負を密かに持ち続けていたのだけれど、この序文を読むと、そうしたファン心理が、何かもう、完全に、マーティン・エイミスに見透かされている感じ...orz
やっぱりそうだよな、自分が世界で一番バラードを理解している人間であるわけないよなぁ…
寝よ。