中学入試問題(国語)の記号論的分析?!
- 作者: 石原千秋
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1999/03/01
- メディア: 単行本
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家人が子供の受験勉強の参考に購入したものを何気なくめくっていて驚いた。何しろ「国語」という教科は「いかさまのゲーム」だというのだ。何故ならゲームであるにもかかわらず、ゲームのルールが競技者に明らかにされていない。では、その「隠されたルール」とは何なのかと言えば、
「国語」という教科の目的は、道徳教育にある。それが学校という空間のルールだからだ。だから、「成長することはいいことだ」とか、「自立することはいいことだ」とか、「人の気持ちを大切にすることはいいことだ」といったことが「国語」教材のテーマになっている。いや、もっとはっきり言えばそれが「正解」になっている。(同書174ページ)
大学の文学部に入れば「人を傷つけるのが楽しい」という気持ちをテーマにした小説を読むこともあるが、しかし「教室」では、それが「どんな人間にとって人を傷つけるのが楽しいのか」という「読み方」に巧みにすり替えられてゆく。大学も所詮「学校」にすぎないからだ、という。
余りにも歯切れ良く「事の本質」をズバリと言い切っているので吹き出してしまった。たかが「受験本」とはいえ隅に置けない。
著者の石原千秋は記号論を駆使したテキスト分析を得意とする日本近代文学の学者だそうで、この本自体は息子の中学受験体験記なのだけれど、ちょっと変わった面白い本です。何しろ中学の入試問題の解説にロラン・バルトやヴィトゲンシュタインやソシュールが出てくるんですから…
「学校」は「学力」だけ「育成・評価」すればいいのであって、「心」や「人物」まで「評価」するような余計なことは止めちまえ、という著者の主張には全面的に共感。著者が言うように、「心」まで「評価」する学校は「牢獄」に他ならない。