「ただのバカ女」倉橋由美子

 「パルタイ」や「アマノン国往還記」など観念的な作風の作品で知られる作家の倉橋由美子(くらはし・ゆみこ、本名熊谷由美子=くまがい・ゆみこ)さんが、10日午前10時9分、拡張型心筋症で死去した。69歳だった。

とうの昔に「決別」した、というか「正体」が見えたような気がして嫌いになり読むのを止めてしまった作家だが、こうして訃報を前にすると感慨深いものがある。

しかし、朝日新聞の、この

政党組織や学生集団などとの違和感の中で自立をさぐる主人公を描いた「パルタイ

という「作品紹介」は何とかならんのか? 全然違うジャン。それともこれ、わざと? 「政治的意図」を持った「歪曲」ですか?
毎日新聞の、この

前衛党員の生活を不毛な性愛に重ねて描いた作品

という紹介の方がずっとマシだよな。
そもそも「主人公」は「違和感の中で自立をさぐ」ったりはしてない。最初から自立している、というより「超然として」周囲を「冷ややかに眺めている」だけ…

当時の「学生運動」や「共産党」をせせら笑う、悪意に満ちたその「ポーズ」がカッコ良かった… 何しろ「左翼」に「理解」や「共感」を示さなければ「知性」や「良識」を疑われるような、そんな時代だったから…

でも、ある時、ふと、これは「ポーズ」なんかじゃなくて、「本気」なんじゃあるまいかという気がしてきて、イヤになり始めたんだよね… 要するに彼女は「理解」した上で「批判」しているんじゃなくて、ただ単に「理解」出来ないだけなんじゃないかと…「ただのバカ女」なんじゃないかと…

…と言うのも「今は昔」の話だよな。当時自分が感じたことが本当に正しかったのか、今となっては何だか確信が持てない。「記憶」は「嘘つき」だしなぁ…

今、彼女の作品を読み返したら自分はどんな感想を持つのだろう? 読み返してる暇なんか無いけどさ…