アニメーター吉田健一

前三分の二の怠さがウソのように一ヶ月ほど前から快進撃を始めた「交響詩篇エウレカセブン交響詩篇エウレカセブン 2 [DVD]だが、ネットで再配信されている最新の回を見る*1うちに、「オレって、ひょっとしたら吉田健一の絵って好きかも…」と気がつき始めた。「吉田健一」といっても、吉田茂の長男で英文学者だったあの吉田健一ではなくて、アニメーターの方の吉田健一のことだ。今にして思えば「オーバーマンキングゲイナーオーバーマン キングゲイナー Vol.5 [DVD]も、お話は全然だったのに、それでも最後まで見てしまった最大の要因は「絵」だったのかも…。当時は気がついていなかったのだけど、要するに私が見たかったのは、富野由悠季ではなく、吉田健一だったのだ…

吉田健一の絵」の何がそれほどいいのか?
まず第一に彼の描く手足のスラリと伸びた「肉体」を見て欲しい。アニメのキャラクターといえばどうしても「顔」だけになってしまいがちだが、実はその「キャラクター」達にも「肉体」があったのだということを「吉田健一の絵」は教えてくれる。というよりも吉田健一はキャラクターに「顔」だけでなく「肉体」を「付与」する「感覚」と「能力」を持っている。彼の絵において「顔」とそれを乗せている「肉体」は同等である。これは紛れもない「才能」だ。理屈をこねればアニメの絵は吉田健一によって初めて*2「記号性」という手塚治虫の呪縛を乗り越え「リアルな肉体」を獲得することに成功したのだ、とか何とか幾らでも言えそうだけど、言えば言うほどつまらなくなるので自粛。とにかく吉田健一の描く伸びやか且つ実在感あふれる「肉体」は「目」に大きな喜びをもたらすのだとは言っておこう。

というわけで、吉田健一の公式ホームページに行ってみたら、ありましたよ、今度は池上永一シャングリ・ラシャングリ・ラの雑誌掲載時の挿絵が… 素晴らしいじゃありませんか、この絵! このページの最後にあるアトラスのイメージなんか、まさにドンピシャッスよ!

吉田健一は素晴らしい。「肉体」が描けるだけじゃなくて「景色*3だって描ける。「建物(構造物)」や「室内」も描ける。特にこの「室内」の「異常に精密なパース」。こんなパースを描けるアニメーターが他にいるでしょうか? そして、そのどれにも独特の緊張感をはらんだとがった感覚がはち切れんばかりに満ち溢れている…

実は「シャングリ・ラ」の単行本を読んでるときから、豊かな視覚的イメージが次々と呼び起こされるので、「これはむしろアニメで見たいな」と思っていたのだけれど、吉田健一の絵を見たらますますその思いが強くなってきた。もう、これは吉田健一でアニメ化するしかない。決まりだ。頼むからやって欲しい。「シャングリ・ラ」のお話自体は、天皇制の存在を日本というシステムにとっての当然の前提として扱っているという点で、「思想的に相容れない」のだけれど、でもいい、アニメはアニメとして是非見たいぞ。

私は予言しておく、「吉田健一」といえば「英文学者」のことではなくて「アニメーター」のことになる日が来る…っていうのはウソだけど、そんな日が来て欲しいような気もする、正直言って…



更新履歴:2005.12.19新規作成、改訂2005.12.20/21/22

*1:日曜の朝7時に起きられない、録画のセットをするのも面倒くさい

*2:ちょっとウソ

*3:http://f49.aaa.livedoor.jp/%7Egallo/shoki_sb(1).htmlにリンクを張りたいのだけどうまくいきません。「(1)」の部分がURLから自動的にはじき出されてしまうみたい。何故? 「はてな」に報告すべき不具合?