焦点は「投資事業組合」 ライブドア強制捜査劇場
[2006年2月3日]
ライブドアと女系天皇問題は小泉政権の致命傷となる
野口氏の死はプロによる他殺
立花隆氏（ジャーナリスト）
立花隆が2006年2月3日に外国特派員協会で行った記者会見の録画。
本来なら立場が違うはずの朝日新聞と読売新聞が手を握り小泉政権に対する包囲網を固めたという話が主なのだけど、その中でもライブドア事件に触れた箇所が個人的には非常に面白かった。
ライブドア関連会社の役員が沖縄で自殺したという例の「エピソード」、これでこのライブドア事件がヤクザと政治家がらみのヤバイ事件であることが自分の中では確定したのだけれど、何故彼が死なねばならなかったのか、その具体的な理由がよく分からなかった。でも、立花隆が示唆したところは明白。要するに野口英昭はライブドアが「マネー社」を買収する際に利用した「投資事業組合」に「実質的」に加わっていた政治家とヤクザの名前を知っていたのだ。野口英昭の死は、その名前を表沙汰にするとどうなるかをホリエモンに伝えるための「明確なシグナル」。それじゃ、検察官１００人に責め立てられても、ホリエモンが口を割るはずはないよね。
立花隆による幾つかの指摘の中でも、「予備知識」として興味深い点は次の２点。
第一は、ホリエモンは事業家としての活動を始めた初期の時点（ライブドア設立よりも前の段階）で既にヤクザとのつながりを持っていたという指摘。ある時どうしても５億円が必要となった新米投資家ホリエモンはヤクザから借金をするハメになり、それが原因でその後も「苦労」し続けることになったと、ホリエモン自身が自著の中で明らかにしていたそうだ。この著作は今でも読めるが、版を重ねる際にヤクザがらみの部分はばっさり削除されたとのこと。
ご承知のように（？）、ヤクザは一度つながりを持ってしまうと、決して放してくれない。骨の髄までしゃぶり尽くされることになる。（知らなかった人はよく覚えておきましょう。為になる知識です。）一度関係を持ってしまったホリエモンがヤクザとのしがらみをその後断ち切れたはずがない。
「投資事業組合」というのは、そのつながりを維持し続ける為には非常に効果的な手段です。誰が構成員であるか公的に明らかにする義務が無い。この「投資事業組合」にたっぷり甘い汁を吸わせてやることで合法的にヤクザに金を渡すことが出来ます。もちろん、ヤクザだけでなく、政治家に金を渡す手段としても上等。便利なもんだ。
第二の点は、現在検察の頂点に立っている松尾邦弘検事総長はかつてロッキード事件の捜査に加わり田中角栄逮捕に直接つながる証言を容疑者から引き出して勇名をはせた人物であるということ。この戦後最大の政治スキャンダルは元総理大臣の逮捕にまで至ったことで検察側の全面勝利だったと思われるかもしれないが、実はそうではない。立花隆によれば「牛一匹が極上のステーキ１枚に化けてしまった」事件であって、元総理大臣という最上の生け贄を差し出すことで、関係者の大部分がまんまと逃げおおせてしまったのだという。若き日の松尾邦弘検事の怒りは如何ほどであったことか…。こうした体験を持つ松尾検事総長の意向が今回のライブドア事件の捜査の進め方にも強い影響を与えている可能性は否定できない。
参考リンク:
で、結論から言いますと、ぬあんと、こうした「国策捜査」というのは、「検察全体の意思」というのではなくて、ただ、単に検事総長である松尾邦弘の“独断”でやっていたにすぎないというのです。
今回の要点は以上。
以下は「ライブドア強制捜査劇場」に関するいつも繰り返しているお題目。
検察が「正義の実現」を志すのは、それはそれで結構なことでしょう。
しかし、何が「正義」であるかを決定する力を、検察だけが独占することは許されないはずです。
まして、不正に対する「懲罰」を検察が実行に移すなどというのは論外。
けれどホリエモンは既に「実質的」に検察によって裁かれ「懲罰」を加えられたとは言えないのでしょうか？ 形式的には「取り調べ」を受けているだけに過ぎないのだけど、ライブドアの株価はついに１００円を切り、既に何百億円もの資産価値が吹き飛んでいるのですから…
ホリエモンは「クロ」なのだから、結果として、それでもいいんでしょうか？
仮にホリエモンの場合はあれでも良かったのだとしましょう。
しかし検察の下す「正義」の定義が常にあなたにとっての「正義」の定義と一致するとは限りません。
それどころか検察が実行する「懲罰」が常に「正義」の実現のためだけに行われるとは限りません。
もし、検察が誤ったら、誰がそれを正すのでしょう？
本来なら、そのような事態に備えて「法の支配」というものがあるのだと思うのだけど…
というか、みんなは覚えてるのかな？
検察の不正を内部告発しようとした途端、逮捕されてしまった元大阪高検公安部長、三井環のことを？
