ジブリ世襲「黒幕」鈴木敏夫インタビュー
スタジオジブリの新作「ゲド戦記」の内幕、というより「ジブリ世襲」の内幕について、鈴木敏夫が語るインタビューが2つ、ネットで公開されている。
前者が昨年末ヨミウリ・オンラインで公開されたもので、後者が今日になってスタジオジブリのサイトで公開されたその「完全版」。
2つの記事を併せ読んで分かったことを幾つか。
▼世襲をお膳立てしたのはやはり鈴木敏夫であった
その点は予想通りであったが、問題はその動機。鈴木敏夫が語るところを素直に信じれば宮崎駿引退後もスタジオジブリを存続させるための「方便」だったということになる。何しろ宮崎駿はクリエーターとしては天才だがアニメーターを育てる「教師」としては「失格」だというのだ。その毒気に当てられて(?)才能ある若者たちもどんどん潰されていってしまう。だから「息子」を「緩衝材」として使うことを思いついたのだと鈴木敏夫は弁明する。確かにありそうな話だ…
だからといってジブリと宮崎の名前を使って金儲けをしたいスポンサー・サイドの代理人として鈴木敏夫が職人気質の現場を押さえつけるために息子を担ぎ出したのではあるまいかという憶測が完全に否定されたわけではない。そういう面もあったかもしれない。まぁ、世の中はそんなもんだけど… でも、やっぱりやな感じ…
▼やはりこれは「典型的な世襲」である
鈴木敏夫の弁明を100%受け入れたとしても、やはりこれは「典型的な世襲」である。世襲もそういう「善意」や「やむにやまれぬ事情」によって行われるのだ。しかしそうであったとしても「世襲」という行為自体が、日本が明治維新以降100年以上をかけて築き上げてきた「西洋的近代市民社会」の「理念」を踏みにじる行為であることには何の変わりもない。スタジオジブリという組織そのものが近代的な意味での「会社」ではなく、もっと原始的な「共同体」であったことの証しなのかもしれないし、そのような原始的な「共同体」だったからこそあのような素晴らしいアニメが作れたのかもしれないのだ。そもそも「風の谷のナウシカ」を始めとする宮崎アニメのイデオロギーは「反近代」「反合理主義」に他ならないではないか? 嫌みな言い方をすれば、その意味で、スタジオジブリは宮崎駿のイデオロギーをしっかり継承して全うしているとも言えるだろう。*1
▼ル・グウィンは宮崎駿が監督ではないことを承知している
ル・グウィンは宮崎駿が監督をすることを前提にアニメ化に同意したのだから息子が監督をするというのは背信行為だという見方もあるはずだが、鈴木敏夫が示唆するところに従えば、この点についてはル・グウィンも承知しているらしい。ただし、インタビューで鈴木敏夫がその辺の「事情」を語る「口調」には何となく不明朗なところがあるようにも思える。宮崎駿とル・グウィンという二人の老人が何となく周囲に言いくるめられてしまったような印象もなきにしもあらずだと、やっぱり思うぞ。