有川浩「海の底」

海の底

海の底

ライトノベル系でめぼしいものを物色中。
今回は海の底から這い上がってきた巨大ザリガニの大群が横須賀の港を占領する話。


しかし、まぁ、ザリガニですよ、ザリガニ…
何かもう少し考えられなかったんですかねぇ…



もっとも作者はザリガニなんかには興味がなかったようで(そりゃ、そうだ…)、話はすぐに停泊中の潜水艦の中に閉じこめられた小中学生の集団劇に移行する。作者後書きによれば元々は「十五少年漂流記」をやる予定だったのだそうだ。しかし、いまどきの子供たちを主人公に据えれば、話は当然ウジウジした「イジメ」とか、郊外の住宅団地の閉鎖的な母親社会における人間模様とか…、それはそれで面白いんですけどね、ううん、ザリガニはどうしたんだ、ザリガニは?
一方、外では、自衛隊の出動に踏み切れないバカな政府のせいで苦労する現場の話。なにしろ機動隊員がジュラルミンの楯と催涙弾で巨大ザリガニの大群と戦わなくれはならないんです。パトレイバーですか? 後藤さんみたいのも出てきます。
結局、最後は「後藤さん」たちの奔走で武装した自衛隊が出動していとも簡単にザリガニを駆除してお終い。


で、一体何の話だったのだろうと振り返ってみると、ううん、やっぱり「社会風刺」? 決断しないトップに振り回される現場とか、子供や母親たちの社会を覆う不健全な閉塞感とか、自衛隊問題とか、米国批判とか、ちょっとしたナショナリズムとか…
結構面白くは読めたけど、でも、これ、ライトノベル
…というよりも、有川浩の場合は、ライトノベルからスピンオフしようとしているよね、明らかに…