人工ウィルス

1918年から数年間猛威をふるったスペイン風邪は、全世界で4000万人の死者を出したとも言われている。その後、残されていた当時の標本などからウイルスの遺伝子配列がわかり、同じウイルスを人工的に作り出せるようになった。

遺伝子配列さえ分かれば「物」と「物」を混ぜ合わせて「生きたウィルス」を人工的に作り出せる段階まで達しているという話は聞いたことがあって、そんな凄いことが出来るのか、信じられないと思っていたのだが、やっぱり本当らしい。
それって「物」から「生命」を造ったと言うことにならないのか?
もっとも、ウィルスは「物」であって「生命」ではないという説も強いらしいけれど…
それはそれとして、絶滅したはずの天然痘ウィルスを人工的に合成してばらまくことも出来るわけだわな… 恐ろしい世の中だ…


《追記》
「遺伝子配列さえ分かれば「物」と「物」を混ぜ合わせて「生きたウィルス」を人工的に作り出せる段階まで達している」という話、ソースは多分これだったと思う。

take0m曰く、"asahi.comによると、米ニューヨーク州立大のグループによって、ゲノム解析の結果の塩基配列情報からウィルスを合成することに成功したとのこと。なんでも、他のDNAやRNAをベースにしないゼロからの組み立てに世界で初めて成功下とのことで、感染症の研究に役立つ反面、危険なウィルスが合成される心配もありますね。



《追記2》
こんなのも見つかった。

今回合成したのは、細菌に感染するウイルス「バクテリオファージ」の一種。簡単に入手できる核酸の材料物質から、一般的な遺伝子増幅技術であるDNA合成酵素連鎖反応法(PCR法)により2週間でつくった。

「物」からウィルスが合成できることは間違いない。ウィルスは「生物」ではないという説がやっぱり有力みたいだけど、でも、何だか「生き物」の一種であるような気がしてならない。少なくともただの「物」でもないよね。


《追記3》
MSNエンカルタにもちゃんと載っていた。

2002年、アメリカのニューヨーク州立大学の研究グループは、RNAの全塩基配列(ゲノム)データをもとに、ウイルスを人工的に合成することに世界ではじめて成功した。人工合成したウイルスはポリオウイルスである。人工合成の方法は、まず、ポリオウイルスのRNAゲノムデータをもとに、そのデータの完全なコピーである相補的なDNA(完全長cDNA)をDNA合成装置でつくり、さらに、そのDNAを鋳型にして酵素をつかってポリオウイルスのRNAを合成した。そして、そのRNAを、実験用の細胞から抽出した液にまぜたところ、RNAがタンパク質をつくりだし、正二十面体の殻をもった完全なポリオウイルスができあがった。この人工ウイルスは本物と同様に、病気をひきおこす病原性ももっていた。

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このように、ただの情報であるゲノムデータから、ウイルスが合成できることがはじめて実証された。しかも、つかわれた技術や知識は10〜20年前に確立されたものばかりである。ウイルスのゲノムは、すでに500種類以上のウイルスで解読されており、インターネットでデータが手に入るようになっている。また、DNA合成装置などは、バイオ産業や遺伝子工学の分野ではふつうにつかわれている。このようなことから、テロリストなどが、猛毒ウイルスのデータをつかって上の方法を悪用したり、生物兵器に使用したりする危険性があり、懸念されている。しかし、ポリオウイルスは塩基の数が約7500しかないのに対して、たとえば天然痘ウイルスは約20万もあり、人工合成するには手間も時間もかかり困難だといわれている。

つまり手間と時間をかければ困難であるけれど出来るわけね。


《追記4》
ウィルスが生物であるか否かという点に関しては「ネットで百科(平凡社)」の記述が面白い。

ウイルスが生物であるかどうかは長い間論議の的であったが,ウイルスは自分ではエネルギー転換系をもたず,物質代謝の面は生物の生きた細胞に依存して自己増殖を行うため,現在では生物の範疇 (はんちゆう) には含められていない。もともとは生物であったのかもしれないが,他の生物の細胞に〈寄生〉して生きるようになったため,情報のシステムだけが残ってしまったものと考えてもよいだろう。