よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』

フラワー・オブ・ライフ (4) (ウィングス・コミックス)

フラワー・オブ・ライフ (4) (ウィングス・コミックス)

「95年エヴァンゲリオン文化圏の終わりを告げる作品の一つ」と絶賛されているのを見て、早速読んでみました。
読んでみたら、一見フツーに学園青春マンガなんですけどね、、、でも、ちょっとちがう。「類型」に収まりきれない何物かがある…本当に優れた作品というものはいつでもそうなんだけれども…
…いや、自分でもよく分かっていないことに関して理屈をこねるのはやめおきます。
ええ、そうですよ。素直に感動してしまったんですよ、私も。
第一巻でもうやめられなくなり、第二巻以降の真島君の活躍ぶりには殆ど感極まって「もうこれ以上は考えられない」と思ってしまいました。
でも、ちがっていたんです。
この最終巻はもっと凄かったのです。
「驚愕の展開」とid:otokinokiさんは書かれてますけど、ええ、自分も驚きましたよ。
作品そのものが更に次のステージに進んでしまったという感じ。
たたみかけるように連続する驚愕のシーン。
題名に秘められた意味が明らかになる驚愕の一瞬。*1
花園君と真島君が正面対決(?)するクライマックス。*2
花園君は絶叫します。

フツーの何がいけないんだ
俺は普通がいい!!
普通の高校生で
普通に恋愛して
普通に失恋して
普通に恥かいて
普通に普通の人間には
なりたくないと
思いたい!!
それこそ普通であれば鼻の先で笑い飛ばしたくなってしまうような陳腐なセリフが圧倒的な真実の叫びとして目の前に突きつけられてくる瞬間をこの作品はものの見事に具現しています。
「オタクの完成形」(©id:otokinoki)であるはずの真島君はこのコトバに打ちのめされてしまいます。*3 でも、その打ちのめされてゆく真島君がますます好きになりますけどね、自分は。
やがて、あの奇跡のように爽やかなエンディング。
でも、そこに真島君の姿はありません。
id:otokinokiさんの指摘されるとおり、それは作者の見事な計算でしょう。
何か割り切れないもの、解決に辿り着けないものが、優れた物語の最後には必ず残されています。何か終わりきれないものを残すからこそ、優れた物語は強烈な余韻を引き起こすのにちがいありません。
もう何もいうことはありません。
お腹いっぱいです。*4


…でも、最後に一言。
これを「女性向けホモマンガ」(BL)のコーナーに積んでおくのはやめてもらえませんかねぇ…ちがうでしょう、そんなマンガじゃないでしょう、これ。おかげで買うときとても恥ずかしい思いをしました…orz

*1:単行本p.144

*2:単行本p.172

*3:打ちのめされた、と思う。少なくとも彼はこのコトバに反駁できなかったではないですか?

*4:真島君のその後を描いた続編など絶対に描かないで欲しい。