村上春樹

家の中に転がっていた文藝春秋を何気なくパラパラめくっていたら村上春樹があまりにも鋭いことを書いていたので感心してしまった。


小説家が正しいことばかり言っていると、次第に言葉が力を失い、物語が枯れていきます。
文藝春秋』2009年4月号p.158『僕はなぜエルサレムに行ったのか』
そんなふうに言う村上春樹は作家として信頼できると思った。
でも、実際に好きな作品は最初の二つの長編風の歌を聴け (講談社文庫)1973年のピンボール (講談社文庫)と短編の『蛍』螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)だけなんだけど…
ちなみに『蛍』は大ベストセラー長編『ノルウェイの森ノルウェイの森 上 (講談社文庫)ノルウェイの森 下 (講談社文庫)の原型となった作品。『中央公論』に掲載されたときに読んで魂が刺し貫かれるほどの感動を覚えた。村上春樹の作品で最も凝縮されていて最も純粋な作品。自分にとってはこの短編の方が二分冊の大長編よりはるかに雄弁であるように思えてしかたがない。世の多くの人々がなぜ『ノルウェイの森』の方を好むのか理解に苦しむ。