地球温暖化なんか怖くない

スノーボール・アース

スノーボール・アース

どの本か忘れてしまったが、確かライアル・ワトソンの本だったと思う。コンピューター上の気象シミュレーションに関してぞっとする話を読んだことがある。気象学者たちが発見したところによれば地球の気候には安定解*1が2つあるという。一つは暑過ぎもせず寒過ぎもしない今の現実の地球の状態。そうしてもう一つが一面の銀世界。雪と氷が地上を隈無く覆う極寒の世界だ。一旦この状態に陥ってしまうと、太陽からの光は雪や氷に跳ね返されてしまうので、永遠に「極寒の地球」が続くことになる。これが今で言うところの「スノーボール・アース」(全地球凍結仮説)の状態だ。*2しかも、シミュレーションを繰り返してみると、暑過ぎもせず寒過ぎもしない今の地球の状態に落ち着く確率よりも、「極寒の地球」に落ち着く確率の方がはるかに高い。
これはちょっと妙じゃありませんか?、とライアル・ワトソンは読者の耳元でささやく。今の地球の状態というのはちょっとあり得ないほど絶妙に「調節」された状態なんです。はたしてこんなことが「偶然」に起こるのでしょうか?、と… そして「人知」や「科学の常識」を超えた「何者か」の存在をさり気なく臭わすところがライアル・ワトソンの上手いところだ。自分もこの手にあっさり引っかかって、その「神秘」に深く心を打たれたのだけれど…


いやぁ、騙されたぜ。
中沢新一もかなりの「つわもの」だけど、彼の場合は、どこかに「こんなの洒落ですよ、洒落。やだなぁ、本気で信じてたんですか?」みたいなところがある。しかし、ライアル・ワトソンの場合は、本気で騙しにくるからな… タチが悪い。悪質だ。


結論から先に言えば、「スノーボール・アース」も永遠に続くわけでない。放っておけばそのうち(と言っても何十万年何百万年という単位だけど)元の「暑過ぎもせず寒過ぎもしない程好い地球」に戻ってしまうのだ。鍵は「火山活動」。分かってしまえば何と言うことはない。二酸化炭素を酸素に変える植物が殆ど死に絶え、更に二酸化炭素を吸収する岩石が雪と氷に覆われると、火山から排出された二酸化炭素が一方的に大気中に蓄積されてゆくことになる。やがて二酸化炭素による「温室効果」が現れて、気温が上がり始め「春」が来る…


正直言って、ライアル・ワトソンの「お話」の方が面白いとは思う。が、しかし、「現実」は所詮こんなもんなんだろうなぁ…と深く納得させられるものがありますね、近年の「スノーボール・アース」説の方が。


この本を読んでいるうちに、本筋とは離れて気になりだしたことが一点。
最近やかましく言われている「地球温暖化」なんてそんなに問題なのかな?ということ。
地球温暖化」と「スノーボール・アース」を較べれば、「地球温暖化」の方がずっとマシだ。それは確かに極地の氷が溶け出して平野部の文明地帯が水没したらえらいことになるし、何十億人という人たちが結果として死ぬことになるかもしれない。文明も失われて生き残った少人数で「人類の歴史」をまた一からやり直すハメになるかも…。でも、「スノーボール・アース」状態になると人類だけじゃなくて「ほとんど全ての生命が絶滅」するのだから、こちらの方がよほど大事だ。 しかも、ライアル・ワトソンを性懲りもなく信じれば、ちょっとした弾みで地球が「スノーボール・アース」状態に落ち込む確率はかなり高いのだ…
二酸化炭素排出削減なんてやってる場合か?
危ないんじゃないの、かえって?
そんなことやって万が一「スノーボール・アース」を招いたらどうするんだ?!


…というわけで、明日からも、今までどおり、無駄なエネルギーをどんどん消費し、二酸化炭素をせっせと空気中に排出することに決めました、私…

*1:という言い方が正しいかどうか分からないが、気候が一定の形に落ち着く状態

*2:もちろん当時はそんな言葉はなかったと思うが…