岡崎京子『東方見聞録』
- 作者: 岡崎京子
- 出版社/メーカー: 小学館クリエイティブ
- 発売日: 2008/02/01
- メディア: 単行本
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アマゾン・コムにもなかなかリストされず、本当に出るのかとやきもきさせられましたが、結局出た(でも、アマゾン・コムには今でもまだ書影が掲載されていない)ので、こっそりと紹介とも感想ともつかぬものを書いてみます。
今から20年ほど昔(1987年)、当時はまだ週刊化されていなかった創刊当初の「ヤングサンデー」に連載された「連作短編」っぽい長編(でも短い)です。時期的には『TAKE IT EASY』の次あたり。実際、質・量共にこの二作は似たような感じがあります。『セカンド・バージン』『TAKE IT EASY』に続く岡崎の長編第三作であるといってもいいかもしれません。*1
でも、1989年の『pink』で化ける前の岡崎京子です。『pink』以降の読者にとっては「何だ、これは!」という代物なんじゃないかと… 『TAKE IT EASY』が面白く読めた人なら多分大丈夫だとは思うのですが…
「市中恋愛観察学講座」という副題がついているけど、この「恋愛」というのは添え物で、実質東京観光案内ですよ、これ。*2
東京タワーから始まって、銀座→国会議事堂→中野ブロードウェイ近辺→引退した山口百恵が住んでいる国立市→原宿・代々木公園歩行者天国の竹の子族→ハワイ(ちょっと番外)→江ノ島→青山墓地→井の頭公園→神田書店街と続きます。
渋い選択ですね。20年前に於いてすら時代からちょっとずれた、時にはレトロですらあるセレクションでした。そのあたり、岡崎のセンスが光ります。
で、20年後の今になって改めて読み返してみると、時の流れの中で一層イイ感じに古びてきて、そこが「奇妙な味」になっていたりして… 作品としては、やっぱり全然たいしたことないんですけどね。
解説の人(藤本由香里)もその辺のところはよく心得ているみたいで、そんなふうに時の流れの中で培われた熟成感を味わったらいかがでしょうかとサジェスチョン。やっぱり落としどころはその辺かなぁ…
で、ここからは岡崎ファンの贔屓の引き倒しみたいな感じかもしれませんが、それでもやっぱり、岡崎京子の「素」の良さみたいなものをこの作品にも感じてしまいます。多分これは「やっつけ仕事」なんですよ。でも、サラサラしていて嫌味がない。それが若き日の岡崎京子の「人徳」です。そんなこと、ファンにとってしか「意味」がないことかもしれませんけど…
《蛇足》
しかし、まあ、知らなかったんですけれど、小学館クリエーティブのラインナップってスゴイですね。あの「ペスよおをふれ」まで出ている。山上たつひこは欲しいかも。
何で今頃、それもよりにもよってあの『東方見聞録』なんだと、最初は不思議に思いましたが、このラインナップであるなら、何か分かるような気がしました。