ジャングルの国のアリス

ジャングルの国のアリス

ジャングルの国のアリス

買ったまま長いこと積読にしておいた本をようやくのことで読んだ。
いわずと知れたSF作家ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(本名アリス・シェルドン、もちろん女)の母親が自分の幼い娘を主人公に据えて書き綴ったアフリカ探検旅行記
実は80年以上昔の1920年代の話。ティプトリーは6歳前後だったというから、この人って作家として活躍し始めたときにはすでにかなりの年寄りだったんだなと改めて実感。
訳者もあとがきで言及しているように、とにかく昔の話だから「アフリカ探検」に出かけた「白人」丸出しでやることがすごい。男も女も何かというとすぐライフルをぶっ放して無益な殺生し放題。現地人は見下してあごの先でこき使う。旅の目的はニューヨークの自然史博物館に展示するためのゴリラの捕獲なのだが、正確に言うと捕獲でなくて、その場で撃ち殺して皮を剥いでしまう。後で剥製にして展示するのだ。いまどきのナチュラリストが見たら卒倒すること間違いなし。
かと思えば、周りのアフリカ人たちが止めるのも聞かずにいつ大噴火を起こすかわからない活火山に登り、よりにもよって火口近くにテントを張って夜をすごしたりと、ただ単に残虐非道なだけでなく、恐ろしく胆の据わった面も見せる。
いやぁ、こんな連中にはかなわない。世界は白人に征服されるはずだわな、と妙に納得せられましたよ、私は。


下の画像はグーグル・アースで見た旅行記の主要舞台となったコンゴ東部の火山地帯。
ミケノ、カリシンビ、ビソケの三山。一行はこの山のふもとでマウンテンゴリラを撃ち殺して皮を剥いだ。
その向こうには一行がその火口の縁で夜を過ごした活火山ニアムラギラも小さく見えている。
ジャングルの国のアリス



上の画像の場所をグーグルマップで見ると以下のような感じ。

より大きな地図で ジャングルの国のアリス を表示



というわけで、この本は iPod touch を傍らにおいて、グーグル・アースやグーグル・マップで場所を確認しながら読み進めると楽しさ倍増。
やっぱり iPod touch はイイ。←って、それが結論かよ。全然本の感想になってないじゃん。←自己ツッコミ。
でも、ネットで調べ物しながら本を読むというのが一つの理想だったのだけれど、iPod touch はそれを実現できる有力なツールっすよ、イヤ、マジで。



というだけで終わるのもあまりにも不真面目なので、本の内容についても少しだけ感想を書いておく。
結局さぁ、この本って、娘自慢に擬装した自分自慢じゃないの? 作者のメアリー・ヘイスティングズ・ブラッドリーって、結構鼻につく厭な女だと思うよ。
こんな夢のような少女時代を送ったティプトリーって幸せだ、という紋切り型の感想で終わってしまう人が多いんじゃないかと思うけど、自分は決してそうは思えないんだよな。この本は、いうならば、彼女にかけられた呪いのように作用し、少なくとも若い頃のティプトリーの人生を支配してしまったんじゃないかと思う。
その支配から脱するためには年上の男との結婚や母の死が必要だったのではあるまいか…
単なる憶測に過ぎないけど・・・
やっぱりティプトリーの伝記を読まなくては…

James Tiptree, Jr.: The Double Life of Alice B. Sheldon

James Tiptree, Jr.: The Double Life of Alice B. Sheldon

これまた買ったまま長いこと積ん読になっている。いつになったら読めるんだ… 英語だしな、なかなか手が着かない。そのうちまた翻訳が出てしまったりしてorz