佐藤亜紀『ミノタウロス』

ミノタウロス

ミノタウロス

喧嘩がしたいならもう少し喧嘩上手になって欲しい。

作者がブログにいきなり意味不明なことを書いているので面食らったが、「週刊現代」に載った高野史緒による書評のことをいっているらしい(おそらく、、、たぶん、、、)
高野史緒こんなページを作ってしまうほどロシア・ソ連好きらしいので、革命直後内戦期ウクライナを舞台にしたこの小説を読んで「ちょっと複雑な気持ち」になってしまったとしても、その気持ちは分かるような気がする。自分も「ロシア革命好きオヤジ」*1なので分かるのですが、あの時代って、下手な小説はもちろん上手な小説(←気配り)よりも、「歴史」自体が面白すぎるんですよね。だいたい、あの時代のあの地域を舞台にしてロシアとウクライナの民族問題を素通りできるはずがない、あたかもそんな問題が存在しないかのように書くのだとしたらあまりにも不自然すぎるとか、ついつい余計なことを考えてしまいます。中途半端な知識が小説という虚構を楽しむことを邪魔しているだけの話なのですが、でも、やっぱり、ウクライナはこんな内戦期よりもそれからあとの方がずっと面白いのに、ロシア共産党ウクライナ共産党の争いとか、富農撲滅運動とか、ウクライナ大飢饉とか、どうしてそっちの方を書かないのだ等々、ページをめくる最中も抑えきれない思いが沸々と涌き上がってきたりします…参考図書→悲しみの収穫―ウクライナ大飢饉
ええ、分かってます。小説の問題ではありませんね、これは。
小説としてみた場合、相変わらず見事な筆の冴えです。特に出だしの部分ね。もう、これで鷲づかみにされたって感じ。
…ただ、終わりがねぇ…なんか物足りないと思いました、正直言って。

*1:世の中には「明治維新好きオヤジ」とかがたくさんいますが、その類。