新宿で異様なものに遭遇する

前回までのあらすじ
せっかくの日曜日だというのに大挙して押し寄せてきた娘の友だちのために居場所を失ったtachは愛する折り畳み自転車(ブロンプトン)と手と手をとりあって流浪の旅に出た。午前中は晴れていた空も今ではにわかに掻き曇り冷たい風が吹き始めている。そんな寒空の下をtachはアテもなくいつまでもいつまでもさ迷い続けるのであった。

新宿の繁華街の北側、大久保辺りの住宅地の小道を走っていたら、どこからともなくハーモニカが聞こえてきた。
見れば向かいから異様な風体のオヤジがハーモニカを吹きながらこっちに向かって歩いてくる。
小柄だが妙に筋肉がついてムチムチした体つきでよく日に焼けている。それが寒くて薄暗い日であるにもかかわらずサングラスをかけて、片手でハーモニカを吹きながら、もう一方の手で車椅子を押している。
よく見ればその車椅子には歳をとって干物のようになってしまった婆さんが座っているではないか。相当な歳で、顔中見事なほどに皺だらけ。口元のすぼまり方からすると歯は一本も残っていないもよう。完全に惚けているらしく全然表情がない。
と、突然、オッサンがハーモニカで何を吹いているのか気がついた。
あの「千の風」とかいうヘンテコな歌ですよ。

ちょうど「わたしのぉ〜お墓の前でぇ〜泣かないで下さい…」という部分のメロディーが耳に飛び込んできた。
今この瞬間にもお迎えが来そうな婆さんの車椅子を押しながら「わたしのぉ〜お墓の前でぇ〜泣かないで下さい…」ですよ、皆さん・・・


呆気にとられているうちにすれ違ってしまったけれど、それにしても一体あれは何だったんだろう?
いまだに自分の見たものが信じられない・・・

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