桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

作者あとがきによれば、ある日突然書きたくなり一瞬のうちに仕上げてしまった作品だとのこと。作者の心の内に自然に湧き上がってきたもの? おそらく作者の今のところの代表作*1。早い話が頭のおかしな父親に虐待されたあげく殺されてしまう中学生の女の子の話だ。同級生の男の子の描き方にはちょっと首をかしげたくなるところがあるが、総じてよく書けた「思春期文学」である。「思春期」だから当然話は暗い。何故これが富士見ミステリー文庫で出なくてはならないのか、何故このような「萌え萌え」のイラストに飾られていなければならないのか、全く分からない。頭がおかしくなりそうなほどに全く分からない。約1年後に「少女には向かない職業少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)がイラスト無しのソフトカバーの単行本として出版されたところを見ると、関係者の思いも同じだったのだろう。事実、この2つの話はよく似ている。話としては「少女には向かない職業」の方が巧くできていて破綻も少ないかもしれない。しかし多少は粗があっても「原液」の濃厚な味わいがある「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」の方に軍配を上げたい。
実は小学6年生の娘が「少女に向かない職業」を読んで夢中になってしまい「もっとこんな話はないのか?」とせがまれているのだが、この本を薦める気にはなれない。良い作品だからこそ子供には刺激が強すぎるような気がする。まぁ、「この前は娘がお父さんを殺す話だったけど、今度はお父さんが娘を殺す話はどう?」とは言えんでしょう、いくら何でも…

*1:…だろうと思う、まだ「推定少女ISBN:4757719957ので断言できないが…