東京東部臨海部散策(東京駅→若洲海浜公園→葛西臨海公園→旧江戸川→小岩駅)


娘(中学生)の友だちが大挙して押しかけてくるというので居場所を失った私は旅に出ることを決意した。
横浜駅まで自転車で乗り付け、その場でたたんで輪行の準備を整える。もう手なれてきたので一瞬のうちにたためてしまう。ブロンプトンはいい。
横浜駅11時半発の東海道線で東京駅に向かう。着いたのはちょうど12時頃。
駅前の物陰で自転車を組み立てる…というより広げる、という感じ。もう手なれてきたので一瞬のうちに広げられてしまう。やっぱりブロンプトンはいい。
目的地も特に決めていなかったのでとりあえず駅前から真っ直ぐ伸びる八重洲通りを海に向かって進む。2キロも行くと佃島のリバーシティーに突き当たる。月島の方へ抜けてゆくと界隈は秋祭り。朝潮橋朝潮運河を跨いで晴海へ渡る。
晴海3丁目の交叉点を左折して晴海大橋へ。この橋は去年開通したばかりの新しい橋だが、とても眺めがいい。北の正面には「ららぽーと豊洲」が、南に目を転じればレインボーブリッジとお台場が一望の下に見渡せる。都心の最新絶景ポイントの一つだと思う。ここ→
晴海大橋を渡るとそこは豊洲6丁目という新しい埋め立て地で、将来築地の卸売市場が移転してくることになっているが、今のところはまだ何もない。何もない埋め立て地が広がっているだけで、空が広い。こんな風景は大好きだが、今日は更にその先へと進む。
更にその先にあるのは木遣り橋。これも去年開通したばかりの新しい橋。東雲運河を跨いで豊洲6丁目と有明をつないでいる。ここも眺めがいいが高速道路の建設中で将来は二階建ての橋になるというから、眺めがいいのも今のうちだろう。(今気がついたのだが、晴海大橋を表示している上のはてなマップには今現在木遣り橋は記載されていない。地図をドローして表示領域をずらしてみると分かる。まさかと思ってGoogle マップを覗いてみたら、こちらにも木遣り橋は記載されていない→http://maps.google.co.jp/maps?f=q&hl=ja&geocode=&time=&date=&ttype=&q=%E6%96%B0%E8%B1%8A%E6%B4%B2%E9%A7%85&ie=UTF8&ll=35.64809,139.789138&spn=0.017262,0.043001&z=15&om=1 それどころか表示を航空写真に切り替えると地図上では完成している晴海大橋まで工事中に戻ってしまう。湾岸の変貌がそれだけ急ピッチで進んでいると言うことなのかもしれないが、やっぱり、ちょっと更新が遅いかも。ゼンリンはアルプスに負けてる。)
有明まで来るとお台場が目と鼻の先。しかし今日はお台場には行かない。若洲海浜公園へ行ってみようという気になってくる。首都高速湾岸線に突き当たるまでこのまま真っ直ぐ進んであとは国道357号線を東へ辿るのが最短距離なのだけれど、この道はダンプが多い。うるさくて全然くつろげないうえに排気ガスをたっぷり吸わされることになる。
遠回りにはなるが、木遣り橋を渡ったところですぐに左折して、東雲団地を通り抜け、辰巳の森緑道公園と夢の島公園の中を突っ切ることにする。遠回りと裏道は得意とするところだ。

辰巳桜橋辰巳桜橋
東雲団地はかなり昔からある団地。都内に住んでいた頃、お台場へのサイクリングにはまっていた時期があった。今から20年ぐらい前のことで、レインボーブリッジも無ければゆりかもめも無い。りんかい線も開通していない。テレビ局もホテルも無ければ観覧車も無い。あるのは運動場と人工の砂浜だけ。バスが通っていたが、それ以外に公共の足の便はなく*1、都心の秘境じみた空気が漂っていた。その非日常的な雰囲気が面白くて、都心サイクリングの目的地として、頻繁に訪れていたのだ。東雲団地はその時必ず通過する場所だったが、当時はいかにも場末というか、うらぶれて侘びしい空気が漂っていた。しかし今回、しばらくぶりに通り過ぎてみると、周囲の再開発が進み、雰囲気が完全に変わっていた。もはや「此処は何処? 私は誰?」の世界。

写真は東雲と辰巳を結ぶ歩行者専用橋。ただし自転車も渡れる。イイ感じ。
夢の島公園夢の島
昔はゴミ捨て場で、最初に出来たのがゴミ焼却場の廃熱を利用した大温室だったと思う。ここも再開発が進んでご覧のありさま。見ただけでは何処の山奥かという感じだけれど、すぐ脇を湾岸道路が通っていて、実は、かなりうるさい。
若洲海浜公園 展望台若洲海浜公園 展望台
夢の島の新江東清掃工場を過ぎた辺りで右折し、一気に2キロほど南下するとようやく若洲海浜公園に入る。最寄り駅の新木場駅からだと3キロぐらいあるので自動車か自転車でもなければなかなかやって来られない場所だ。
写真は公園の入口のすぐ傍にある展望台。砂町南運河と荒川河口が出会う角に位置し、運河の向こうには東京ヘリポートが、荒川の河口を挟んだ遙か彼方には葛西臨海公園東京ディズニーランドが見えている。
駅から遠いだけに殆ど無人状態。ここは公園のすぐ入口で、この南に更に2キロ以上続いている。
若洲海浜公園 堤防若洲海浜公園 堤防
荒川河口に面する公園の東側の海岸。堤防が連なり、そのすぐ内側はコンクリートの道路。それが真っ直ぐと2キロ以上続く光景は、湾岸特有の非日常的な感じがしてなかなか好い。
若洲海浜公園 サイクリングロード若洲海浜公園 サイクリングロード
しかし、自転車で走るならサイクリングロードをお薦めしたい。高台になっていて海際よりも見晴らしがきく。荒川河口、葛西臨海公園東京ディズニーランド、房総半島、東京湾が一望の下に見渡せる。開放感に溢れた雄大な風景を目の前に、海からの風を全身に受けながら思いっきりペダルを漕ぐのは何とも言えない快感。このサイクリングコースを企画した人は偉いと思う。
若洲海浜公園 休息所若洲海浜公園 休息所
サイクリングロードの所々にこんなふうに海を見晴らす休息所がある。
若洲海浜公園 最南端より都心を望む若洲海浜公園 都心遠望
サイクリングロードの最南端まで来ると南西方向の視界が開け都心が見えてくる。この日は、最南端にたどり着いた途端に太陽が雲に隠れてしまい、今ひとつ冴えない感じ。すっきりと晴れた日の景色は好いに違いない。特に冬の夕方の景色が素晴らしそう。
若洲海浜公園 シュール若洲海浜公園 橋梁工事
公園の更に沖合に新しい埋め立て地があって、そこに通じる橋が建設されている最中だった。コンクリート製の巨大な柱が海の中に並んでいるのはシュールな光景だ。
やがてこの上に道路が通れば、空が塞がれ、今の開放感は失われてしまうだろう。この公園が本当に好いのは今のうちだけかもしれない。
若洲海浜公園 最南端若洲海浜公園 最南端
最南端部のカーブの光景がなかなか素晴らしい。カメラに収めようと光の具合が良くなるのをしばらく待ったがいつまで経っても太陽が雲の陰からすっきりと姿を現さない。仕方がないので薄日が射してきた段階で妥協。もっと日が射していれば海も空ももっと青くなって綺麗なんだけど…
ちなみに、あきらめて公園の入口まで引き返してきたらまた晴れてきた…バカ者めが! 思わず天を罵る。
荒川河口橋荒川河口橋
隣の葛西臨海公園に行く為に湾岸道路まで引き返し、荒川河口橋で荒川を渡る。これを渡れば江戸川区
荒川河口橋の鳥荒川河口橋の鳥
前の写真には街灯が何本か写っていますが、その一つ一つの天辺に一羽ずつ鳥がとまっている。
荒川河口橋 眺望荒川河口橋 眺望
橋の真ん中で上流方向を望む。奥の方にある夢の島マリーナからヨットが次々に出て来る。
荒川サイクリングロード荒川サイクリングロード
荒川河口橋の上から荒川サイクリングロードを望む。かなり整備されたサイクリングロードだと聞いたことはあるが、まだ走ったことはない。あらかじめ決められたコースを走るより迷路のような街中で自分が選んだ道を走る方が好きなのだけれど、そのうち一度くらいは走ってみようと思う。
葛西臨海公園 クリスタルビュー葛西臨海公園 クリスタルビュー
若洲海浜公園と違い目の前が駅になっているので人出が多い。昔からお気に入りの場所の一つだが、ひとけのない寂しい場所からやって来ると人間が多すぎるような気がしてしまう。でも、この展望台はいい。水平線上に並んでいる沖合の埋め立て地の正体不明の構造物のシルエットやら、行き交う船のシルエットやらが、さり気なくステキだ。
葛西臨海公園 クリスタルビュー2葛西臨海公園 クリスタルビュー2
展望台自体も趣のある形をしている。海に向かって開かれた窓。或いは海への門。水族館もそうだが、この公園の海の演出の仕方はなかなかいい。
葛西臨海公園 汐風の広場葛西臨海公園 汐風の広場
展望台と海のあいだは広い芝生になっている。これもいいのだけれど、でも今日はちょっと人が多すぎるような気がする。
葛西臨海公園 クリスタルビュー3葛西臨海公園 クリスタルビュー3
展望台の白と空の青の対比も美しいと思う。
葛西臨海水族園葛西臨海水族園
そして、この水族館の姿も美しい。この反対側の正面から近づいてゆくと、入口がそのまま海の中に潜るというメタファーになっている。メタファーを志向する建築は多いけれど、それがこれほど成功している例は珍しいと思う。でも、今日は前を通り過ぎるだけにする。
葛西臨海公園 東屋葛西臨海公園 東屋
公園の東の端までやって来た。ここまで来ると殆どひとけがない。趣のある東屋というか休憩所を見つけたが、既に先客がいたので写真だけ撮る。
葛西臨海公園 岸壁葛西臨海公園 岸壁
海の方に出てみるとやはりひとけがない。南西の方向を見ると西に傾きはじめた太陽の光が海面に反射して眩しい。それはそれで美しい光景だ。ちょっと悪いと思ったが、人目を忍ぶカップルに写真の構図のアクセントになってもらう。
葛西臨海公園 岸壁2葛西臨海公園 岸壁2
南東に目を転じると目の前は旧江戸川の河口で、その向こうにディズニーランド附属のホテル群が見えている。大嫌いな場所だが、こんなふうにして眺めると綺麗だ。自分と同じように自転車でやって来たニイチャンもさっきからずっと見とれている。
何となく好い雰囲気の場所で去りがたい気もしたが、先客がいて(このほかにもう一人本格的なサイクリング装備の爺さんがいた)、しかも、みんな雰囲気に酔っているのが見え見えなのも面白くない。先に進むことにした。
旧江戸川サイクリングロード旧江戸川サイクリングロード
後の話は単調。公園の東側から始まる旧江戸川沿いのサイクリングロードをただひたすら北上した。途中、浦安橋を渡って川の東岸に移り、しばらく千葉県側を走った。
江戸川清掃工場の煙突江戸川清掃工場の煙突
川の向こうの東京側に巨大な煙突が見えた。遅い午後の陽光を浴びてシュールに輝いている。
江戸川閘門江戸川閘門
旧江戸川と江戸川の分岐点に達する。現在の江戸川の本流(江戸川放水路)はここから東側に分かれ千葉県の市川市内で東京湾に注いでいるが、これは明治時代に掘削された人工河川である由。
旧江戸川の分岐点には流量調節の為の水門が設けられていて、その上を渡って千葉県川から東京都内へと戻ってくる。
写真は水門本体の隣に設けられている閘門。船舶はここを通って上流・下流を行き来する。要するに水門脇に作られた脇の抜け道。通りかかったとき、ちょうど船が入ってきたのだが、あわててカメラを取り出して構えたときには既に通り過ぎたあとだった。
江戸川水門江戸川水門
水門の全体像。手前の大きいのが閘門で、奥の鉄塔の左側に並んでいるのが水門の本体。この上が道になっていて渡れる。時間は5時ちょっと前。既に完全な夕陽状態。
江戸川の夕日江戸川の夕日
東京側に戻ったあとは、江戸川の堤防の上を走るサイクリングロードをひたすら北上。これまで堤防の内側は直ぐに川だったが、ここからは河川敷が出現し始め、広々とした感じ。どんどん日が暮れてゆく。東京の街の向こうに真っ赤な夕陽が沈んでいった。
JR総武本線の鉄橋が見えてきたところで江戸川を離れ、街の中を突っ切って小岩駅に向かった。
小岩駅の前で自転車をたたむ。もう慣れているので一瞬のうちにたためる。ブロンプトンは本当に好い。
ホームに上がると5時半。娘の友だちが帰ったというメールがちょうど届いた。居場所が出来た。もう帰ってもいいのだ。
隣の新小岩駅横須賀線直通の快速に乗り換えると十五分も経たないうちに出発点の東京駅に着いてしまう。正味5時間かけて走ってきた道程は一体何だったんだろうという気もするが、とにかく電車というものは凄いものだとしみじみと感じる。
横浜着は6時半。駅前で自転車を広げる。もう慣れているので…以下略。


夕飯はカレーだった。嬉しかった。


(2007.10.07追記)(写真日記

*1:ひょっとしたら船の科学館に行く水上バスだけは当時からあったかもしれない。