96kHz/24bit高音質配信はCDを超えたか?

近年、HD配信とかHQM配信とか称して、CDより音質が良い音楽データーをネット経由で販売するというのが流行っているようですが、実際、CDより音がいいんでしょうか?
理屈から言えば良くなければおかしい。
でも、とかく理屈どおりに行かないのが世の中です。
何事も実際に試してみなくては本当のところはわからないものです。
というわけで、たまたま手元の再生環境が揃っていたところに、HD配信の無料クーポン券というものをもらったので、試してみました。
以下、その結果報告。


まず、結論を手っ取り早く言っておくと、ビックリするような差は出ません。
じっと耳を傾けていると、音のヌケが良くなったというか、音が幾分クリヤーになったという感じはあります。低音もこもった感じにならずにすっきりと抜けてゆく。それから演奏ホールの残響がよく出ます。
でも、ちょっと聞いただけで、いや、コレは凄いじゃん、ということばが口をついて出てくるほどの差ではない。
だから今すぐ高音質配信に移行したいという程ではない。
けれども同じ音源でCDと高音質配信が選べる場合は、自分なら、躊躇なく高音質配信の方を選びます。


次に比較方法の詳細。


まず、音源はこれ。

チャイコフスキー:交響曲第5番

チャイコフスキー:交響曲第5番

もともとCDを持っていたという点がポイントですね。CDよりも高音質なフォーマットで録音したものをわざわざ音質の劣るCDのフォーマットに変換してCDとして発売していたものです。*1嘆かわしい。
この音源を、CDの発売から実に10年を経て、e-onkyo musicが(多分)オリジナルの高音質フォーマットでデーターとしてネットを通じて販売してくれたわけです。実に喜ばしい。


再生に用いた機器は以下の通り。

パソコンHDC-1L
ONKYO(が買収したソーテック)のオーディオ・コンピューター。音楽専用の二台目のパソコンを探しているんだったら絶対これ。いまどき日本国内の工場で一台一台手作りしてるって言うんだから驚きます。実物を見ると作りもしっかりしている。設定価格は当初5万円台でしたが現在では実売3万円台でも入手可能です。ONKYOは商売が下手なような気がする。
オーディオ・コンピューターを自称しているだけあって動作音も静かで、なにより優秀な音源ボードを積んでいる。このボードのデジタル→アナログ変換機能はひょっとしたら十年前の並のCDプレーヤーのデジタル→アナログ変換性能よりいいのじゃないかと思う。CDをロスレス方式で取り込んで鳴らしてみると、CDプレーヤーでかけるよりも幾分音がいいような気がするんですよね。澄んだ音になるような気がする。

ONKYO HDC-1L HDオーディオコンピュータ

ONKYO HDC-1L HDオーディオコンピュータ



CDプレーヤーDCD-1650AZ

多分十年ほど前に8万円くらいで買ったDENONのCDプレーヤー。三代目。二代目が壊れたので良く調べもせず雑誌のベストバイに選定された機種をいい加減に買った覚えが。好みの音でも無いが、もともとCDの音に期待していなかった*2ので、せいぜいこんなもんだろうと諦めて使っている。



アンプA-1VL

既に工場出荷が終了した6年前の製品をつい一ヶ月ほど前に9万円で買った。それまで使っていた山水のAUα607という年代物のアンプと比べるとあまりにも著しく音質が向上したので腰を抜かした。当時でも8万ぐらいした製品なので値段的にはそう変わらない。いい買い物をしたと思っている。音楽を聞く楽しみを蘇らせてくれた。

この時の劇的な変化に比べるとCDから24bit/96kHzデーターへの移行はたいした事はないなという気がする。音質の向上を求めるのであれば今のところはやはりハードのグレードアップが王道みたい。

ONKYO プリメインアンプ 200W+200W(4Ω) シルバー A-1VL(S)

ONKYO プリメインアンプ 200W+200W(4Ω) シルバー A-1VL(S)


スピーカーAM-5 III

オーディオ・マニアが小馬鹿にしてフンと鼻を鳴らすBOSEのスピーカー。でも実売5万円を切る値段でこの音ならお買い得だよね。大きさもリビングに置くならこれが限界。これ以上の大きさを求めるのであれば家族と事を構える覚悟が必要。確かにもっとヴァイオリンの音が甘く響くスピーカーが欲しいなぁと思うときもあるんだけど、足るを知るの精神で使い続けてもう10年ぐらいになるんじゃないかな、ひょっとして。

Bose Acoustimass 5 Series III speaker system スピーカーシステム

Bose Acoustimass 5 Series III speaker system スピーカーシステム



アンプにCDプレーヤーとパソコンをつないで、同時に再生を開始して、アンプのソースセレクターを切り替えながら細かく聴き比べを実行。パソコンの方がちょっと再生開始が遅れたので、まずCDを聞いて、次にスイッチを切り替えてパソコンにすると、うまい具合に今丁度聞いたところがもう一度聞けました。

で、結論は最初に述べたとおり。
差はあると思う。
でも一目でわかるというか、ちょっと耳にしただけで歴然としているというほどの差ではない。
でもよく聴けば差はわかる。


しかし、この差が著しいものではないという結果は、本当に、CDの16bit/44.1kHzとHD配信の24bit/96kHzのフォーマットの差そのものによってもたらされたものなのかどうかは、実のことをいうと定かではありません。
ひょっとしたら使用した再生機器があまり性能が良くなかったのでフォーマットの差があまり良くでなかったのかもしれない。
或いは逆に最近のオーディオコンピューター搭載の(音源ボードの)デジタル→アナログコンバーターの性能が10年前のCDプレーヤー内蔵のデジタル→アナログコンバーターの性能を凌駕しているので、フォーマットの差が実際より誇張されているということも考えられます。
そう考えると、CDのデーターを16bit/44.1kHzのWAVファイルとしてパソコンに取り込んで、これを24bit/96kHzのHD配信データーと比較するべきだったのかもしれません。
が、今更実験をやり直すのも面倒なので、今回のレポートはここまでということにします。
お粗末。

*1:実はHDCDなのですが、対応CDプレーヤーを持っていないので普通のCDとして聞くしか無い。HDCD対応CDプレーヤーなんて全然普及しなかったから、世間的に言っても実質普通のCDとして出回っていたと言ってもいいくらいだと思う。

*2:アナログレコードの音のほうが良かったと信じている時代遅れの頑固者。その後、ある事情があってCDの音も捨てたものでなくなってきているんだなと思うようになっては来たが、それでもまだ一般的なCDの音はうまくハマったときのレコードの音にはかなわないと思っている。